より大きな成果を上げたい! プライベートも充実させたい! ごく当たり前だけれど、実際は難しい願望を叶えるために、仕事の効率化は永遠のテーマです。世の中にさまざまなノウハウが語られる中で、本当に実践するべきは何なのか? ペコリッチプラスの編集部が徹底調査しました。
今回は、パソコン作業の効率化や手帳やアプリを使ったTipsは省き、効率化のための根本的な対策に絞っています。
考えるより動く/動きながら考える
仕事がなかなか進まないときには、やり方や方向性にあれこれ悩んでしまい、実際のタスクに手が付かない、というケースがあります。しかも、いちど悩み始めると、ネット検索などで情報をみるばかりで、よけいにドツボにはまって身動きがとれなくなってしまいます。
その人の性格や仕事の内容にもよるでしょうが、こうした時間は軽視できない仕事のロスになります。
「すごい効率化」の著者である金川顕教さんは、「考えるより動く」が効率化の第一歩だと説いています。
金川さんは、仕事で結果が出ない人は、うまくいくための行動を「そもそもやっていないか」、「やり方が間違っているか」のどちらかだと言います。例えば、プレゼンがうまく行かない人は、そもそも人前で話す経験やその練習をしていないか、話し方が間違っているか、というわけです。
話す経験をしていないのであれば、まずプレゼンするという行動を起こさなければ、永遠にプレゼンはうまくならないでしょう。「話し方を学んでから」とあれこれ考えて行動できないのはNGです。
話し方が間違っているなら、まず話してみて、聞いてもらい、良くない点を改善していけば、いつか正しい方法が見つかるはずです。ここで、大切なのが改善点を見つける検証のプロセス。金川さんは、仕事においてPDCAサイクル(計画→実行→検証→改善)のP(計画)とD(実行)を繰り返している人が多いとも指摘しています。
効率化への取り組みも、プレゼンスキルときっと同じです。よいと思ったことをやってみて、うまく行かなければ何が悪かったか検証し、改善してまたやってみる。この仕組みさえ自分の中にできてしまえば、仕事の効率化やスキルアップなど、さまざまなことが好循環で回っていくはずです。
元マイクロソフトの伝説のプログラマー中嶋聡さんは、次のように述べています。
考えてから手を動かすのではなく、手を動かしながら考えてください。崖から飛び降りながら飛行機を組み立てるのです。
なぜ、あなたの仕事は終わらないのか スピードは最強の武器である
「飛び降りながら飛行機」とはなかなか刺激的な表現ですが、成功者の感覚はそうしたものなのでしょう。先ほどのプレゼンの例で言えば、手を動かしながら「学ぶ」と言うこともできそうです。
プレゼンをする前にプレゼンの本を読むより、経験を経た後で、あるいはリアルタイムで試行錯誤しながら本を読んだほうが、吸収の効率は高いのではないでしょうか。
段取りファースト
上記のように、仕事が発生したらあれこれ考えず、見切り発車だと言われても、考えるより行動することが肝心。仕事効率化をテーマにした書籍で、共通して語られることです。
とはいえ、目についたこと、思いついたことから手を付けるのは考えものです。本当は断るべき作業をやってしまったり、重要な作業を後回しにして不要な作業からはじめてしまう可能性があります。
そこで、最初の具体的な行動を、「タスクの全体像を理解して段取りを決める」にしてはいかがでしょうか。まずは、
・全体の作業を分解してタスクに落とし込む
・タスクを順番に並べスケジュールを立てる
これだけでも、ぐっと効率が上がりそうです。できれば、重要なタスクを絞り込んだり、人に任せられるタスクも明らかにできると、さらにスピード感が出るでしょう。
100点満点の仕事より締切を守るほうが重要
「締切を過ぎた完璧な仕事よりも、締切内の70%の仕事のほうが価値が高い」
上司や先輩から、そんなふうに教わったことはないでしょうか? 締切を守るということは、外部の取引先や社内の仲間に迷惑をかけないうえで、何より重要なこと。同時に締切は、自分の生産性を上げ、よい仕事をたくさんするための装置でもあります。
完璧な仕事に固執するあまり、締切をないがしろにしてしまう弊害は、仕事の効率化について書かれた書籍や記事の多くが指摘します。
人は締切がないと、ついついダラダラと仕事をしてしまいがちです。しかし、期限が決められていればそのなかに収めようと、自然と行動するもの。期限が決められていない仕事でも、自分で締め切りを設定するのは、仕事のコツと言えるかもしれません。
なお、自分の中だけの締切はなかなか守れないので、設定した期限を依頼した相手や、周囲の同僚などに伝えるのがおすすめです。
求人を探す
判断の期限を決め、それ以上悩まない
重要な判断、決断をくだすには勇気がいります。とことんまで考え抜かなければ、と考えるのは当たり前です。
しかし、ときに堂々めぐりに悩んで、ときばかりが過ぎてしまうことがあります。そんなときは、考えているようでむしろ思考が止まっているのかもしれません。
「無駄な仕事が全部消える超効率ハック」著者の羽田康祐さんは、次のように述べています。
人はつい、不確実な未来に対して判断を下そうとするとき、「もし、判断が間違っていたら…」と悩んでしまいがちです。
しかし神様でもない限り、未来のことを完全に予測するのは不可能ですから、どこかの段階でベストと思える判断をしていくしかありません。
早く判断するほど早く行動できるので、間違いに気づいたり、軌道修正がするのも早くなります。判断の「正確さ」より「速さ」を重視するべきだ、というのが同氏の主張です。明確な期限を定めて、その時点で情報収集や悩むことを辞めて、合理的な仮説のもとに判断を下すべきだと言います。
また、いちど決めた判断に「本当に間違っていなかったのか」とくよくよしても意味がありません。アクションに集中して、間違いがあったことがわかれば、改善していけばよいのです。
過ちては改むるにはばかることなかれ
「コンコルド効果」というキーワードをご存知でしょうか?
コンコルドとは英仏で共同開発が進められた超音波旅客機で、1970年代から2000年まで、パリ、ロンドンとニューヨーク間で就航していました。実は商業的には採算が取れていなかったのですが、それまで苦労や出費がムダになってしまうので、赤字を出しながら事業が存続されていました。
コンコルド効果とは、何かを継続することで損失が拡大するとわかっていても、それまでに費やした労力やお金、時間などを惜しんでやめられない心理を言います。
どうでしょう? 非効率的なやり方だとわかっていても、または本当は不要な作業だと気づいていても、それまでの自分が否定できず作業を続けてしまう…そんな経験はないでしょうか?
偏った考えに惑わされず間違いはすぐに改めて、軌道修正しましょう!
というのは正論で、わかっていても割り切った判断は難しいものです。そんなときはコンコルド効果のような非合理的な圧力が、自分にかかっていることを意識するだけでも、正しい判断の助けになるかもしれません。
やらないことを決めるには? ←外部の視点で作業を見る
全米で大ヒットし、日本でもベストセラーとなった「エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする」では、私たちがとらわれがちな「3つのウソ」を指摘しています。
エッセンシャル思考になるためには、3つの思い込みを克服しなくてはならない。「やらなくては」「どれも大事」「全部できる」──この3つのセリフが、まるで伝説の妖女のように、人を非エッセンシャル思考の罠へと巧みに誘う。うっかり耳を傾けようものなら、不要なものごとの海におぼれることになる。
エッセンシャル思考を身につけるためには、これら3つの嘘を捨て、3つの真実に置き換えなくてはならない。「やらなくては」ではなく「やると決める」。「どれも大事」ではなく「大事なものはめったにない」。「全部できる」ではなく「何でもできるが、全部はやらない」。 この3つの真実が、私たちを混乱から救い出してくれる。本当に大事なことを見極め、最高のパフォーマンスを発揮することが可能になる。
「やるべきことと、そうではないことを見極め、不要な作業は捨てましょう」「やっても効果のない無駄な作業は断りましょう」とは、効率化について語られた記事や書籍では、おそらく100%に近い確率で語られることです。
問題は、やらなくても良い作業とは何なのか、どうやって判別すればよいのか、ということ。やらないことの判断基準やみつける方法を端的に語るのは、なかなか難しいようです。
ひとつのヒントとして、「仕事が速い人は、『これ』しかやらない ラクして速く成果を出す『7つの原則』(石川和男)」を挙げましょう。「『やらないこと』の賢い見つけ方」として、次の3つを提示しています。
1.転職者の意見に耳を傾ける
転職してきたばかりの人は、社外の視点を持ち、社内の良い点も悪い点もよく見えています。自分や職場の業務を改善したいと思ったら、転職者に話を聞くとヒントが得られます。
2.新入社員の話を否定しないで聞く
新入社員も社内の常識に縛られない存在です。常識外では?と思うことも否定せず聞くことで、「やらなくてよいこと」に気づくかもしれません。
3.外部の知見と照らし合わせる
具体的には「ビジネス書」「セミナー」「異業種交流会」などが挙げられています。他社の時間効率化や残業削減の取り組みを知ることが役に立ちます。
共通しているのは、自分たちの組織、会社とは違った視点で、自分たちの作業のプロセスを見つめ直す、ということ。
これを個人レベルの作業に落とし込めば、
・自分の作業プロセスを上司や同僚、場合によっては部下に見てもらう
・指示されたタスクに疑問がある場合、同僚などに相談する
といった対策が考えられます。いずれにしても、従来からの慣習や自分の思い込みで非効率な作業が定着しないよう、常に見直していく必要があります。
緊急度が低く重要度が高い仕事のスケジュールを押さえる
「もっと自分の能力を生かした仕事ができるはず」「将来に役立つスキルを身に着けたいが時間がない」
といった気持ちを抱えながら、「日々の作業の効率が上がらない」「仕事のモチベーションが上がらない」と悶々としている人は多いのではないでしょうか。まずは、読書や学習といった業務以外のTO DOも含め、仕事を次のように切り分けると、解決の足がかりになります。
①緊急度が高く、重要度が高い
②緊急度は高いが、重要度が低い
③緊急度は低いが、重要度が高い
④緊急度が低く、重要度が低い
日々の仕事に忙殺されている人は、①②の緊急度が高い作業に追われているのではないでしょうか。④の緊急度、重要度がともに低い仕事は、さほど問題にはなりません。
問題は、③の緊急度が低く重要度が高い仕事です。
今すぐ成果が出るわけではありませんが、将来のあなたを形づくるうえで根本的な時間がこの領域に当たります。
たとえば、「スキルアップに費やす時間」や「中長期的なキャリアづくりに費やす時間」などが典型です。
この領域は、重要だとわかっていても優先順位を下げてしまいがちです。なぜなら、締切りがあるわけでもなければ、すぐに成果が出るわけでもないため、つい目の前の仕事に忙殺されて後回しにしてしまうからです。
しかし、この領域に時間を割けていない状態とは、今に追われ、自分の将来と向き合えていない状態とイコールです。より具体的にいえば、「中長期的に取り組まない限り身につかないスキル」の獲得に時間を費やせていない状態です。
将来の自分と向き合い、希望を持ってスキルを磨く状況に身を置くことが、日々の仕事に前向きに向き合い、バリバリ生産性の高い仕事をすることにつながります。
短期的な仕事に追われず、③緊急度は低いが、重要度が高いタスクの時間を確保することが、とても大切。あらかじめスケジュールを確保し、強制的に自分を拘束するくらいの気持ちで、忙殺される仕事に紛れない工夫をするべきなのかもしれません。
まとめ
細かいものも含め無数に公開される仕事効率化テクニックのなかから、共通するエッセンス、特に現場で活用できるメソッドを掘り下げました。
人の個性や仕事の内容はさまざまですから、絶対にうまくいくメソッドはありません。やってみて検証すること、時には違った視点で客観的に考えることが、自分に最適な仕事効率化を果たす近道です。
参考資料
なぜ、あなたの仕事は終わらないのか スピードは最強の武器である
誰よりも短時間で、常に最高の成果を挙げる人の すごい! 時間管理術
仕事が速い人は、「これ」しかやらない ラクして速く成果を出す「7つの原則」