仕事の優先順位を付ける方法、考え方とは?

仕事の優先順位を付ける方法、考え方とは?

仕事を円滑に進めて成果を上げる、またはプライベートの時間を確保するために、タスクの優先順位を重視する人は多いでしょう。では、目的を実現するような優先順位の付け方、考え方とはどのようなものか? ペコリッチプラス編集部が、じっくり考えました。

まずはマルチタスクの幻想を捨てる

「聖徳太子は10人の話をいちどに聞いた」というエピソードを引き合いに、自分にだってマルチタスクをやればできる! と思ったら、いちど立ち止まって考えてください。
このエピソードは、聖徳太子がいかに常人離れしていたかを示すもの。複数の仕事を同時にこなすことは、普通の人にはできないということを示しています。

仕事をバリバリこなしている人は、あたかもマルチタスクを制しているようですが、細かく見れば、ひとつひとつのタスクを、丁寧に完結させているはず。

仕事に追われ始めると、複数のタスクを同時にこなして時間効率を上げたいと思ってしまいますが、おそらくそれは実現しません。あちらにもこちらにも仕事がある、と焦ってしまうと、つい色々な作業に手をつけて、全体の効率を落としてしまいます。

マルチタスクの幻想は捨て、目の前のタスクは同時処理できない、数珠つなぎのようなものとして考えると良いでしょう。そのうえで、ひとつひとつ整理すると、冷静に優先順位をつけることができそうです。

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大きな仕事を細分化する

自分の得意で好きな仕事はサクサク進められるので、手を付けやすいものです。反対に、苦手な仕事や難易度が高い仕事、しかも手間がかかる大きな仕事は、後回しになりがちです。言うまでもなく、この状態は優先順位を付けて作業しているわけではありません。

難易度が高い大きな仕事は、細分化して簡単で軽微な仕事にしてしまうのが、先延ばしにせず適切な優先順位をつけるコツです。

アイスピックで細かな氷に砕いてしまえば、大きな氷の塊のままより何倍も溶けるのが速くなります。  仕事も同じです。細分化すればするほど、簡単に片づくのです。
つまり、大きくて難易度の高い仕事を細分化して、「好楽円な仕事」へと変化させているのです。

仕事が速い人は、「これ」しかやらない ラクして速く成果を出す「7つの原則」

「好楽円な仕事」とは「好きな仕事」「楽な仕事」「円滑に進む仕事」のこと。上記、「7つの原則」筆者の石川和男さんは、意識しないと楽なほうに逃げてしまうと、注意喚起しています。

 

優先順位はつけない・つけられない

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「優先順位をつけよう」という本稿の趣旨に矛盾するようですが、いちど受けた仕事に優先順位も何もありません。すべて、決められた期限までに終わらせなくてはならない重要な仕事です。

作業の優先順位を内容で決めるのは、大きな間違いです。「大事な仕事を先に済ませよう」と考える人は多いのですが、これは明確に間違いです。
大事であろうとなかろうと、作業すると決めた予定は、必ず終わらせなければなりません。それが、時間管理のポイントです。
もし、できるかどうかわからない予定があるなら、それは受けるべきではないのです。僕は、できない可能性がある作業は受けません。受けきれないほどの予定を抱えて、優先順位をつけながら作業していくと、絶対に休めなくなります。また、仕事のクォリティも落ちるでしょう。

誰よりも短時間で、常に最高の成果を挙げる人の すごい! 時間管理術

こう考えると、優先順位という言葉に、少し語弊があるのかもしれません。仕事自体には、優先も劣後もなく、私たちが付けられるのは作業の順番です。売上の大きい仕事や、社長から直接支持された仕事を先に済ませるのはよいことですが、他の仕事をおろそかにしてよいわけではないのです。

優先順位を判断する6つの軸

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では、受けた仕事の中で、作業の順番を決めるにはどうすればよいか? これは状況によりさまざまですが、一定の基準がなければ、場当たり的な優先順位になってしまいます。それぞれが自分の判断基準を持つために、いくつかの軸を提示しておきましょう。

・締切までの時間
仕事を決められた期限内に終わらせるのは最も大事なこと。締切が迫っている仕事、あるいは店舗などでお客様を待たせている仕事があるなら、優先させなければなりません。

・全体の作業効率
メールをまとめて返すなど、集中して一気にやってしまったほうが早いタスクがあります。締切だけでなく、効率も考えて順番を決めるとよいでしょう。

・成果までの早さ
長期的に大きな成果が見込める仕事より、小さくても速く成果を出せる仕事から手をつけるべきだ、という考え方があります。成果を出せば周囲の評価も、自分自身のモチベーションも上がります。仕事しやすい状況をつくるのも、優先順位をつける目的になりえます。
下記では「ロー・ハンギング・フルーツ( Low Hanging Fruit )」=低いところにぶら下がっている果実、と表現しています。

もう仕事の優先順位づけには迷わない!成果を最大化させる5つの方法

・苦手な仕事
好きな仕事、楽な仕事から手をつけがちなのは前述の通り。苦手な仕事を先延ばしにしていると、余計に手をつけるハードルが高くなります。仕事を細分化する、という最初のタスクだけでも手を付けておくと、仕事の全貌が見えて精神的にも安定します。

・自己ブランド
上司や部下、取引先の担当者のメールの返信が遅く、自分の作業が滞ってしまったことはないでしょうか。催促の電話やメールをするだけでも、タスクがひとつ増えて効率が悪化します。
自分の立場になってみれば、メールのレスポンスが早い、または締切前にタスクを終わらせるというだけで、相手の仕事がはかどります。そして、「仕事がデキる」という印象を与えることができるでしょう。
こうした自己ブランドを重視する人は、コミュニケーションや相手のあるタスクの優先順位を上げることが有効。少々無理をしても、仕事がしやすくなるはずです。
・初動を早くする

「AI分析でわかった トップ5%社員の時間術」の著者である越川慎司さんは、次のように述べています。

(トップ)5%社員の決定的な特異点は、初動が圧倒的に早いことです。仕事を受けてから間髪入れずにすぐスタートします

AI分析でわかった トップ5%社員の時間術

 

仕事に早く手を付けると、作業量や難易度、重要なポイントなど、全体像が把握できます。他の仕事との兼ね合いの中で、どのように優先順位をつければよいか、早めに判断することにもつながります。

 

やらないことリストをつくる

タスク管理のためにTO DOリストを作っている人は多いでしょう。真面目な人ほど、自分がやるべきタスクをびっしり書き込んで、結局処理できず翌日、翌週へ持ち越しているのではないでしょうか。
自分が持っているタスクを整理する上では有効な手段です。しかし、TO DOリストを作ったからといって、仕事の優先順位が最適化されたり、効率化するわけではありません。

ここは、TO DOの反対の「やらないことリスト」をつくって、仕事の絶対量を減らしてはいかがでしょうか。受けるべきではない仕事、自分が受けなくてもよい仕事を、受けないよう決めておくのです。それが最終的に正しいかはさておき、「(今日は)このタスクは絶対にやらない」と意思決定するだけでも、仕事が整理され優先順位を決めやすくなります。

「すごい効率化」の著者の金川顕教さんも、やらないことリスト(しないことリスト)の作成を薦めています。

ビジョンとはすなわち、自分が「何をするべきか」ですが、それはイコール「何をしないか」ということでもあります。自分がコミットするべき仕事、やるべき仕事を見極め、それ以外は捨て去る。そうすることで、余計な仕事を抱え込まずに仕事の絶対量を減らして、適正に保つことができるのです。  TODOリストにおける問題点は、やることがどんどん増えて優先順位がつけられなくなることにあります。  自分の優先順位を明確にするために、ぜひ、しないことリストを作ってみましょう。

すごい効率化

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優先順位の付け方を振り返る

ビジネスの基本的なフレームワーク「PDCAサイクル(計画→実行→検証→改善)」は、仕事の優先順位づけにおいても欠かせないプロセスです。
大事なのは「C=CHECK」すなわち検証。やらなくてもよい作業を優先させていなかったか、全体が効率化される順位付けになっていたか、すべての仕事を円滑に遂行できたかetc…振り返って検証し、問題点を明確にして改善しなければなりません。

前述の越川さんは、「週15分の内省タイム」を勧めています。

たとえば、働く時間の6割以上を費やす社内会議や資料作成、メールやチャットの処理は成果につながるかどうか、その作業中はわかりません。
そこで5%社員は、定期的な内省を通じて、成果につながったかどうかを必ず確認しています。それが、週に1回15分の内省です。

AI分析でわかった トップ5%社員の時間術

緊急度と優先度のマトリクス

仕事の優先順位に関して記載された記事で、多く登場するのが緊急度を縦軸に、優先度を横軸にとった次のような表。スティーブン・R・コーヴィ氏の世界的な大ベストセラー「7つの習慣」で、提示された考え方です。

自分のタスクを、次の4つに分類して管理していこうということです。

①緊急度が高く、重要度も高い
②緊急度は高いが、重要度は低い
③緊急度は低いが、重要度は高い
④重要が低く、緊急性も低い

①②は緊急度が高いわけですから、作業の優先順位も高まります。肝心なのは②で、緊急度が高く重要度が低い仕事ばかり受けていると、便利屋のようになってしまうこと。役割分担ができないか、冷静に考えたいポイントです。
③は長期的に大きな成果を上げる可能性のあるタスク(例えばスキルアップのための学習)で、日々の仕事にかまけていると後回しになりがち。優先順位が下がらないよう、しっかりと時間をとっておくことが大切です。

まとめ

仕事の優先順位をつけるには、まずマルチタスクの幻想を捨てること。仕事をひとつひとつのタスクに分解し、全体が滞りなく終わるよう、作業の順番を決めるのが優先順位付けの要諦です。
自分なりのぶれない判断基準を持っておくことが重要。はじめのうちは、「締切までの時間」「全体の作業効率」「成果までの早さ」「苦手な仕事」「自己ブランド」「初動までを早くする」の6つを軸に考えてみてください。あらかじめ「やらないことリスト」を作っておくのもおすすめです。
とはいえ、いきなり上手に優先順位を付けられるとは限らないので、「週15分の内省タイム」など定期的な振り返りが必要。日々の仕事に忙殺されないよう、緊急度は低いが、重要度は高い仕事の時間を確保しましょう。

参考資料

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会社では教えてもらえない 残業ゼロの人の段取りのキホン

すごい効率化

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