【コラム】金木犀の記憶

ペコリッチの食べることが大好きな
アルバイトが書いた勝手なコラムです

 


 

 

何故だか分からないけれど、
昔よりも『金木犀の香り』から
遠ざかった気がする。

 

 

 

小学生の頃、親が働きに出ていたため、
毎日祖母の家に帰っていた。
学校まで迎えに来てくれた祖母と
手を繋ぎ歩く帰り道。

 

膝が悪い祖母と、ゆっくり歩く帰り道。
祖母はやたらと花に詳しく、「あれは木蓮」
「あれは百日紅」などとうっとりしながら、
毎日私に花の名前を教えてくれた。

金木犀もそうだった。

 

 

 

祖母が目をつむり、上唇をうすく
めくりあげながら、歌うように「いいにおい」と言う。
香りの強い花が苦手だった彼女だが、
金木犀は別のようだ。

 

夕日に照らされ黄金に輝く白髪。
頼りたいような、頼れないような、
固い桃みたいな背中。
湿り気のないカサついた肌。

一枚の絵みたいに、金木犀の香りは
祖母と一緒に、私の記憶に閉じ込められている。
冷たい風が吹き、祖母のあたたかく
ざらついた手を握る。
「帰ろうねえ」と微笑む祖母。

優しくて美しい記憶である。

 

近年では「金木犀入りのジャム」などが
売られているらしい。柑橘系の味なんだそうな。
あの記憶を、是非舌の上で踊らせてみたいものである。

 

しかし、こうも思う。

 

 

それってほんとにおいしいの?

 

食べてみたいな、金木犀のジャム。

 

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