はじめに
飲食業界では、人材の採用と定着が事業の成否を左右すると言っても過言ではありません。特に居酒屋やラーメン店、ファミリーレストランなどのチェーン店ではスタッフの入れ替わりが激しく、常に求人・面接を行っている企業も多いでしょう。実際、厚生労働省の調査によれば**「宿泊業,飲食サービス業」**における離職率は令和4年度で26.8%と全産業中もっとも高い水準にあります
。そのため、飲食業界における採用面接の仕方を工夫し、面接を成功させて優秀な人材を確保・定着させることが非常に重要です。
面接を成功させることで得られるメリットは多岐にわたります。例えば、適性の高い人材を見極めて採用できれば、その後の業務パフォーマンス向上やサービス品質の安定につながります。離職率が下がれば採用コストや研修コストの削減にもなり、店舗運営の安定化につながります。また、面接という場は応募者にとって会社の第一印象を決定づける場でもあります。公正で気持ちの良い面接を行えば、応募者から選ばれる企業になり、口コミで評判が広がって採用ブランドの向上にもつながるでしょう。
本記事では、飲食業界の採用担当者や面接官向けに、「公正な採用選考のポイント」「面接で聞いてはいけないNG質問集」「適切な面接の進め方」について解説します。飲食業界の面接の仕方・進め方を改めて見直し、採用の成功につなげるヒントにしてください。
飲食業界の採用面接イメージ(応募者と面接官がテーブル越しに対話している様子)
面接官の心得
公正な採用選考の重要性
採用面接ではまず何よりも「公正さ」が求められます。応募者の基本的人権を尊重し、適性・能力のみを基準として評価することが大前提です。飲食業界だから特別に許される質問があるわけではなく、どの業界であっても法律やガイドラインに沿った公正な面接を行う必要があります。採用担当者は、意図せず差別的な質問や選考をしてしまわないよう、どのような質問が禁止されているか正しく理解しておかなければなりません。
また、公正な面接を行うことは応募者に対する礼儀でもあります。どんな応募者に対しても公平・平等に接し、先入観で判断しない姿勢が信頼につながります。特に飲食店のように多様な人材を採用する現場では、性別や年齢、国籍に関係なく適性と人柄をフラットに評価する意識が大切です。「応募者の適性・能力とは関係のない事柄は面接で聞かない」ことを徹底し、能力本位の採用選考を行いましょう。
面接担当者が持つべき意識
面接担当者は企業の代表として応募者に向き合う存在です。応募者にとって面接官の言動ひとつひとつが会社の印象になります。そのため、応募者目線に立った面接を心がけましょう。高圧的な口調や上から目線の態度は絶対にNGです。緊張している応募者の本来の姿や魅力を引き出すために、できるだけリラックスできる雰囲気を作ることが大切です。例えば笑顔で挨拶したり、アイスブレイクとして差し障りのない雑談を交えたりすると良いでしょう。ただし後述するNG質問に該当する内容は雑談であっても避けてください。
面接は企業が応募者を選考する場であると同時に、応募者が企業を評価する場でもあります。悪い噂はネットやSNSですぐに広まる時代です。不適切な対応をすれば「この会社の面接官は感じが悪い」「圧迫面接をされた」といった評判が拡散し、採用ブランドを傷つけかねません。面接官は常に「応募者に選ばれている」という意識を持ち、誠実かつフラットな姿勢で臨みましょう。飲食業界では人手不足が深刻です。面接の段階で応募者に見限られて他社に行かれてしまわないようにすることも、面接担当者の重要な役割なのです。
面接で聞いてはいけないNG質問集
公正な採用選考を行う上で、面接で聞いてはいけないNG質問を知っておくことは欠かせません。厚生労働省のガイドラインでも、採用面接で配慮すべき特定の質問事項が細かく定められています。ここでは代表的なNG質問のカテゴリーを紹介し、それぞれ具体的な質問例を挙げます。これらは飲食業界に限らず全業界共通のNG質問ですが、特に個人経営の飲食店などでは知らずに聞いてしまいがちな内容も多いので注意しましょう。
本人に責任のない事項
**「本人に責任のない事項」**とは、本人の努力や意思では変えられない個人的な属性に関するものです。具体的には以下のような内容が挙げられます。
- 本籍に関すること
- 家族に関すること
- 住宅状況に関すること
- 生活・家庭環境に関すること
これらに関する質問はプライバシーに深く関わり、応募者本人の資質とは無関係です。実際のNG質問例として、例えば次のようなものがあります。
- 「ご出身は?」
- 「ご両親の出身地はどこ?」
- 「生まれてからずっと●●に住んでいますか?」
- 「ご両親はお仕事は何をされているんですか?」
- 「ご自宅は持ち家ですか?」
- 「学費は誰が出しましたか?」
- 「家庭環境はですか?」
- 「〇〇駅のどのあたりに住んでいますか?」これらは応募者本人ではどうにもできない事項であり、面接の目的である適性や能力の評価に関連性が低い質問です。不用意に踏み込めば個人情報の収集やプライバシー侵害にもつながりかねません。公正な採用選考のために、こうした質問は避け、他の適切な質問や評価基準に時間を充てるべきでしょう。
本来自由であるべき事項
**「本来自由であるべき事項」**とは、各個人が自分の意思で自由に選択できるプライベートな価値観や信条に関するものです。具体的には以下のような内容が該当します。
- 宗教
- 支持政党
- 人生観・生活信条
- 尊敬する人物
- 思想
- 労働組合や社会運動(学生運動歴など)に関すること
このカテゴリーに属する質問も、業務上の適性・能力とは無関係であり、個人の思想信条の自由を侵しかねません。実際のNG質問例として、例えば次のようなものがあります。
- 「信仰している宗教は?」
- 「支持している政党はありますか?」
- 「どのような本を愛読していますか?」
- 「あなたの人生観を教えてください」
- 「何新聞を読んでいますか?」
- 「尊敬する人物は?」
- 「学生運動などにに参加経験はありますか?」
- 「結婚・出産の予定はありますか?」
宗教や政治信条、人生観や家庭観、将来的な結婚・出産の予定などは、面接で尋ねるべきではありません。このような質問は差別的であると受け取られる可能性が高く、雇用上の差別禁止の観点からも問題視されます。特に「結婚・出産後も働く意思」や「今後の結婚予定」といった質問は、女性応募者に対する差別につながるため男女雇用機会均等法の観点からもNGです。面接官としては「本人の自由に属する事項には立ち入らない」ことを徹底し、仕事に直接関係のある話題に集中しましょう。
採用基準に関係のない質問
上記以外にも、職務上の適性や採用基準に直接関係のない個人的な質問は避けるべきです。例えば以下のような内容が典型的です。
- 健康状態に関すること(持病の有無、身長・体重など身体的特徴)
- 結婚や出産の予定に関すること(将来のライフイベント)
- その他生活上の個人的状況(マイカーの有無、実家暮らしかどうか など)
面接や応募書類で、これら業務に無関係な事項を質問・記載させることは禁止されています。健康状態については、特別な職業上の必要性があり業務遂行に不可欠な場合に限って、本人に目的を説明した上で確認することが認められています。例えば飲食店でも、深夜勤務や重労働がある職種で医師の健康診断結果が必要な場合はあります。しかし、合理的な理由なく健康診断書の提出を求めたり「最近病気はしましたか?」と尋ねたりするのはNGです。
また、応募者の身元調査(自宅周辺の環境を調べたり、親族の情報を収集したりすること)も職業差別につながるおそれがあるため禁止されています。例えば「自宅はどの辺りですか?」「ご家族はどんな人?」といった質問は、この身元調査に類すると受け取られる可能性があります。面接官としては、「この質問は本当に採用基準(適性・能力)に関係しているか?」と常に自問し、少しでも怪しい場合は避けるようにしましょう。
以上のNG質問をまとめると、応募者本人がコントロールできない事項や個人の自由意思に属する事項、職務と無関係なプライベートな事項は面接で聞いてはいけないということです。そうした質問は公正な採用選考の妨げになるだけでなく、応募者に不信感を与え企業イメージを損なう危険があります。飲食業界の面接だからといって例外はありません。面接では適性・能力に関係ある内容に絞り、応募者の人権に配慮した質問設計を心がけましょう。
適切な面接の進め方
では、NG質問を避けつつ、どのように面接を進めれば良いのでしょうか。ここからは面接官に求められる具体的な面接の仕方・進め方について解説します。質問内容の工夫、公正な評価方法、そして面接官自身が陥りやすい心理的偏りへの対策という3つのポイントに分けて見ていきましょう。
質問内容の工夫
まず、質問内容の工夫です。面接で効果的に応募者の適性や人柄を引き出すには、質問の仕方が重要になります。以下の点に留意して質問を準備しましょう。
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オープンな質問をする: 応募者が自由に語れるような質問を心がけます。例えば「はい」か「いいえ」で終わってしまう質問ばかりでは、応募者の人となりを深く知ることはできません。例えば「当社で長く働けますか?」と聞けば誰でも「はい」と答えるでしょうし、「飲食の仕事は好きですか?」と聞けば「好きです」と答えるのが普通です。このような質問では本音や具体性が引き出せません。代わりに「当社でどのように成長したいですか?」や「飲食業界で働こうと思った動機を教えてください」のように、考えや経験を語ってもらえる質問にしましょう。
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評価したい能力・資質に紐づく質問をする: 事前に求人ポジションで求めるスキルや資質を洗い出し、それらを確認できる質問を用意します。たとえば飲食店のホールスタッフ採用であれば「接客で心がけていることは?」や「過去にお客様対応で工夫した経験はありますか?」といった具体的なエピソードを尋ねる質問が有効です。調理スタッフなら「これまで習得した調理スキル」や「ミスをした時の対処方法」などを聞くことで実務能力や人柄が見えてきます。質問は思いつきでその場で聞くのではなく、あらかじめ準備しておくのがおすすめです。場当たり的に質問していると本当に知りたいことを聞き逃してしまう恐れがあるためです。
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企業・店舗のミッションに絡めた質問をする: 飲食チェーンの理念や店舗の方針にマッチする人材かを確かめる質問も効果的です。例えば「チームワークを大事にしていますが、チームで働く上で意識していることは?」や「当店の理念『○○』に共感する点を教えてください」などです。ただし押し付けがましくならないよう、あくまで応募者の考えを聞き出す形にしましょう。
このように質問内容を工夫することで、応募者からより具体的で本音に近い情報を引き出すことができます。反対に、上記のNG質問にあったような本人のプライバシーに踏み込む質問や、答えが一律でわかりきっている質問ばかりだと、面接の質は低くなってしまいます。飲食業界では面接時間が短めなケースも多いですが、限られた時間だからこそ質問を厳選し、有意義な対話になるよう心がけましょう。
公正な評価方法
次に、公正な評価方法についてです。せっかく良い質問をしても、評価の仕方が主観的すぎると適切な採用判断はできません。以下のポイントを意識して、公平な評価・選考を行いましょう。
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評価基準(採用基準)を明確にする: 面接に入る前に、その募集職種で求める能力や人物要件を書き出し、評価項目と評価基準を設定しておきます。例えば「コミュニケーション能力」「向上心」「経験値」など項目を作り、5段階評価する、といった形です。複数人で面接する場合は事前に面接官同士で評価基準をすり合わせておきます。採用基準を明確にすることで評価のブレや主観による差異を防ぐことができます。
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面接の記録を残す: 面接中に応募者の回答内容や自分が感じたことをメモしておきます。面接後すぐに評価シートに記入し、記憶違いや思い込みが入らないようにしましょう。後から複数の候補者を比較するときにも、記録があることで客観的に検討できます。
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複数の面接官で評価する: 可能であれば、面接官は複数人体制にするとより公平になります。一人の面接官の主観だけで合否を決めると偏りが生じる可能性があります。2~3名で面接にあたり、それぞれ独立して評価した上で意見交換をして最終判断するのがおすすめです。飲食店の現場では店長ひとりが面接を行う場合も多いですが、可能であれば本部人事や他店舗の店長など第三者の目を入れると良いでしょう。
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数値や具体例に基づいて評価する: 印象ではなく事実に基づいて判断するクセをつけます。例えば「笑顔がさわやかだったから高評価」ではなく、「回答の中で具体的に○○の経験があり当社の求める△△スキルを持っていそうだから高評価」といった具合に、評価の根拠を明確にします。こうすることで、後述する心理的な偏りにも流されにくくなります。
面接官としては、「この評価は自分の主観や感情に左右されていないか?」と常に問い直す姿勢が重要です。応募者の適性・能力と直接関係のない要素に引っ張られていないか、自社に不合理なバイアスがないか、チェックしながら評価を進めましょう。公正な評価を徹底することが、ひいては公正な採用選考の実現につながります。
陥りやすい心理的偏りとその対策
最後に、面接官が注意すべき**心理的偏り(バイアス)**について説明します。人は誰しも無意識のうちに何らかのバイアスを持っており、面接官も例外ではありません。「自分はまったく偏りなく公平に評価できている」と断言できる人は少ないでしょう。面接官にありがちな心理的偏りを理解し、自分の評価傾向を客観視することで、採用面接の見極め精度を高めることができます。
以下に、採用面接で陥りやすい代表的な7つの心理的偏りを挙げます。
- ハロー効果 – 応募者の特定の優れた点に引っ張られて「他の点も優れているだろう」と高く評価しすぎてしまう傾向(逆に一つ欠点があると他も悪いと低評価しすぎる場合もあります)。
- 寛大化傾向 – 他者に対して甘い評価をつけてしまう傾向。本来並の評価であるはずなのに全体的に高めに点数をつけてしまうようなケースです。
- 対比効果 – 直前に非常に優秀な応募者の面接を行った場合に、その次の応募者を実際よりも見劣りするように評価してしまう傾向。直前の候補者との対比によって評価が影響を受ける現象です。
- 対比誤差 – 面接官自身の能力や価値観と比較して、応募者を過大または過小に評価してしまう傾向。例えば自分にないスキルを持っている人を過大評価したり、逆に自分が得意なことを苦手な人を低く評価したりするような場合です。
- 論理的誤差 – 直接関係のない要素を関連付けて考え、論理的に筋が通っているように見えて実は偏った判断をしてしまうこと。例えば「アルバイト経験が長いからうちの店にもすぐ馴染めるだろう」と短絡的に判断してしまうケースなど、本来因果関係が不明確なものを論理的に関連づけてしまう誤りです。
- 情実効果 – 個人的な好き嫌いや感情で評価が左右されてしまうこと。たとえば応募者が自分と出身地や趣味が同じと知って親近感から高評価をつけてしまう、逆に面接中の受け答えでイラッとしたから低評価にしてしまう、といったケースです。
- ステレオタイプ評価 – 固定観念や偏見によって評価してしまうこと。応募者個人をきちんと見る前に、「飲食バイト経験がないと続かないだろう」「〇〇大学出身だから優秀に違いない」などといった世間一般のイメージで判断してしまう誤りです。
面接官は以上のようなバイアスがあることを踏まえ、自らの評価を常に振り返ることが大切です。「自分は甘めに採点していないか?」「前にすごい人がいたからこの人を実力以上に低く見積もっていないか?」など、評価表を見直したり他の面接官の意見と照らし合わせたりしてチェックしましょう。また、複数の評価項目に分けて点数化している場合は、特定の項目だけ突出して高得点・低得点になっていないか確認します。一つの印象に引きずられて他も甘く/辛くつけていないか検証するのです。複数人で議論する際も、お互いのバイアスを指摘し合うことでより公平な合議ができるでしょう。
心理的偏りへの対策としては、まず自覚することが第一歩です。自分が陥りやすいバイアスのパターンを知っておけば、面接中や評価時に「今の判断は適正だったか?」と立ち止まることができます。そして評価基準の明確化や複数評価者によるチェックといった前述の方法が、バイアスの影響を軽減するのに有効です。面接官研修などでこのようなバイアスについて学ぶのも良いでしょう。公正な採用のために、面接官自身が**「公平な評価者」であり続ける努力**を怠らないことが肝心です。
NG質問をしてしまった場合のリスク
ここまでNG質問の例と公正な面接手法を見てきましたが、万が一うっかり不適切な質問をしてしまった場合、企業側にはどのようなリスクがあるのでしょうか。採用担当者として知っておくべき法的リスクとブランドイメージへの影響について解説します。
法的リスク
採用面接の場で違法な質問・差別的な質問を行った場合、企業は法的なペナルティを受ける可能性があります。日本では職業安定法という法律に基づき、公正な採用選考が義務付けられています。もし面接でNG質問を行い、応募者から訴えられたり行政機関に通報されたりすると、職業安定法第48条の4に基づいてハローワーク等から行政指導や改善命令が出されるリスクがあります。例えば「面接で本籍や家族構成を聞かれた」「結婚の予定を執拗に質問された」といった苦情があれば、所管官庁が企業に対して指導を行います。
さらに、改善命令に従わず悪質な場合には職業安定法第65条により**「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」**が科される可能性もあります。これは実際に刑事罰が適用されるケースは稀ですが、法律上そのような罰則規定があることは念頭に置いておかなければなりません。加えて、男女雇用機会均等法や労働基準法など他の関連法令に違反する質問(例えば妊娠中の応募者を理由なく不採用にする等)は、別途そちらで行政指導や訴訟リスクが発生する可能性もあります。
このように、面接のNG質問は単なるマナー違反ではなく法的に禁止された行為であることを認識しましょう。最悪の場合、企業が訴えられて裁判になったり、罰金などの処分を受けたりするリスクがあるのです。
企業のブランドイメージへの影響
法的リスクと並んで見逃せないのが、企業イメージや採用ブランドへの悪影響です。先にも触れたように、現代はSNS等で面接の体験談が容易に拡散される時代です。もし応募者に不適切な質問や対応をしてしまえば、「あの会社の採用面接は最悪だ」といった評判があっという間に広まりかねません。
人権に配慮しない不適切な面接は、応募者個人の心象を悪くするだけでなく、会社のイメージダウンにつながる恐れがあります。その結果、ユーザー(お客様)からの印象も悪化し業績に影響したり、応募者数自体が減少して必要な人材確保が困難になったりする可能性も考えられます。特に飲食業界は人手不足が深刻ですから、一度「ブラックな採用をする会社」と見られてしまうと致命的です。採用難に拍車がかかり、店舗運営にも支障が出るでしょう。
逆に言えば、公正で気持ちの良い採用面接を行えば応募者から選ばれる企業になり得ます。たとえ不採用になった応募者でも、「あの会社の面接官は親切だった」「きちんと話を聞いてくれた」と感じれば、その人が将来お客様になってくれるかもしれませんし、周囲に良い評判を広めてくれるかもしれません。採用面接も広い意味で企業のマーケティングの場なのです。
以上より、NG質問の排除と適切な面接態度の徹底は、法的リスク回避のみならず企業のブランド維持・向上のためにも不可欠と言えるでしょう。
まとめ ~採用の成功に向けたアクションプラン~
最後に、本記事の内容を踏まえて採用の成功に向けた具体的なアクションプランをまとめます。飲食業界の採用担当者・面接官の方は、ぜひ以下のステップを参考に自社の面接プロセスを見直してみてください。
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現行の面接質問をチェックする
まず、自社(自店)で使っている面接質問リストを見直しましょう。本記事で挙げたNG質問が含まれていないかをチェックします。もし類似する質問があれば、ただちに削除・修正を行います。過去の面接でNG質問をしていなかったか、他の面接担当者にも確認して共有することも大切です。 -
面接で評価するポイントを明確化する
どんな資質やスキルを持った人材を求めているのか、採用基準を言語化します。チェーン展開する飲食店であれば、本部で共通の採用基準を策定し、各店舗の面接官に展開すると良いでしょう。例えば「笑顔・愛想」「気配り」「清潔感」「経験値」など評価項目をリストアップします。 -
質問内容を設計・改善する
明確にした評価ポイントに基づき、それぞれを確認できる質問を準備します。NG質問に該当しないか注意しながら、オープンクエスチョンであること、具体的なエピソードを引き出せることを意識して質問を作成します。質問例を社内で共有し、面接官ごとに聞く内容が大きくブレないようにします。 -
面接官への研修・周知を行う
公正な採用選考の重要性やNG質問リスト、質問の仕方のポイントなどについて、面接に関わるスタッフ全員に教育します。特に現場店長が面接官を兼ねるケースでは、本部からしっかり研修機会を設けましょう。法律知識や面接テクニックだけでなく、会社の顔としての自覚やホスピタリティ精神も伝えます。 -
面接評価プロセスを整備する
評価シートや面接後のフィードバック方法を決めます。複数面接官で実施できる場合はその体制を組み、難しい場合でも面接官の評価を本部人事などがクロスチェックできる仕組みを検討します。評価基準に沿って適正に評価できているか、定期的に面接官同士でレビューし合うのも有効です。 -
面接官自身のバイアスに気づく機会を持つ
面接官は日頃から自分の評価傾向を振り返るようにします。候補者を複数面接した後は評価に偏りがないか見直し、必要に応じて他者の意見を求めます。また、年に一度程度は面接官同士で集まって課題共有や情報交換を行い、「自分は志望動機ばかり重視しすぎていないか」などお互いフィードバックし合うと良いでしょう。 -
常に応募者にリスペクトを持って接する
最後に基本ですが、どんな応募者に対しても敬意を持って接することを忘れないでください。応募者は緊張していますから、温かい笑顔と相槌でリラックスさせ、本音を話しやすい雰囲気を作ります。面接終了後には「本日はありがとうございました。結果は◯日までにご連絡します。」と丁寧に伝え、応募者の不安を和らげましょう。採用面接も一種の顧客対応と考え、一期一会の出会いを大切にする姿勢が、結果的に良い人材とのご縁を結ぶことにつながります。
以上、飲食業界の面接NG質問集と適切な面接の進め方について詳しく解説しました。飲食業界(居酒屋やラーメン店、レストランなど)の採用現場でも、公正で質の高い面接を実践することが、優秀な人材確保と離職防止のカギとなります。ぜひ本記事のポイントを参考に、面接手法をアップデートしてみてください。採用担当者自身が面接を通じて会社のファンを増やすつもりで取り組めば、きっと採用の成果も上がっていくはずです。公正な採用と職場定着の実現に向けて、今日からできることから一歩ずつ始めていきましょう。