[2022年最新版]カフェと喫茶店、純喫茶の違いとは? 法律とイメージ、歴史からひもとく日本のカルチャー

私たちの生活に欠かせないカフェと喫茶店は、日本の貴重な飲食カルチャーのひとつ。一緒くたにはできないけれど、明確な違いも言いにくい両者について、独自の調査、資料から考えてみました。ぜひ、お気に入りのカフェ、喫茶店探しの参考にしてください!

カフェと喫茶店の違いを言える人は4割弱

ペコリッチが2022年5月に行った調査では、一般の人(n=121)のうち「カフェと喫茶店の違いがわかる」と答えたのは37.2%。飲食業界で働く人(n=113)でも39.8%と、大きな違いはありませんでした。
6割以上の人が、カフェと喫茶店を明確に区別できていないことがわかります。

カフェと喫茶店のイメージは?

とはいえ、何となくのイメージでは、それぞれに違った印象を持つ方が多いのではないでしょうか。Google検索数から探ってみましょう。

カフェ おしゃれ…12100件/月
カフェ レトロ…880件/月

喫茶店 おしゃれ 590件/月
喫茶店 レトロ 3600件/月

ラッコキーワードより(本稿執筆時点)

カフェに関しては、「おしゃれ」 の語とともに検索した人は「レトロ」の10倍以上。喫茶店はその反対で「レトロ」とともに検索する人が、圧倒的に多いことがわかりました。
上記はあくまで目安ですが、カフェがモダンで洗練されたイメージを持つのに対し、喫茶店に古き良き空間といったイメージがあることは、ひとつの見方と言えます。

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↑カフェのイメージ?

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↑喫茶店のイメージ?

カフェと喫茶店では法律上の定義が違ったけれど…

結論から言えば、カフェと喫茶店の法律的な違いは、「以前は一応あったが、今はない」が正解です。
以前の食品衛生法では、次のように両者が区別されていました。

①飲食店営業(一般食堂、料理店、すし屋、そば屋、旅館、仕出し屋、弁当屋、レストラン、カフェー、バー、キャバレーその他食品を調理し、または設備を設けて客に飲食させる営業を言い、次号に該当する営業を除く)

②喫茶店営業(喫茶店、サロンその他設備を設けて酒類以外の飲物または茶菓を客に飲食させる営業を言う)

カフェは食事やアルコール類を提供することができましたが、喫茶店はどちらもNG。喫茶店営業の場合、ケーキやクッキー、トーストなどの軽食といったものしか、メニューに入れられませんでした。
ちなみに、営業許可に関係なく「カフェ」や「喫茶」の店名を付けるのは自由。そのため、「喫茶店」と名乗っていても、飲食店営業の許可をとり、食事やアルコールを提供するケースはありました。

2021年には、食品衛生法が改正され、喫茶店営業は飲食店営業に統合されました。現在では法律上も、カフェと喫茶店の違いはなくなりました(調理やアルコールの提供にはどちらも許可が必要)。

純喫茶ってなんだ?

広辞苑によれば、純喫茶は「酒類を扱わず、珈琲や紅茶などを供するのみの喫茶店」とあります。わざわざ「純」と付けたのは、旧食品衛生法にあるような、喫茶店の定義を強調するためでしょう。
また、昭和初期には女性が客の隣に座って接客するような色っぽい喫茶店が流行したそう。「純喫茶」は「不純喫茶」と区別するためのアイデンティティだったのかもしれません。

参考:文化人のサロンが、なぜ「不純」な店に?!

カフェと喫茶店の歴史

今や、どの街にもあるカフェや喫茶店の源流は、明治中期までさかのぼります。日本の社会でどのように受け入れられ、発展してきたか。 主な出来事を振り返ってみましょう。

1888年可否茶館オープン
日本発の喫茶店が東京の上野広小路で開店しました。トランプ、玉突き、クリケット、碁、将棋を楽しめるハイカラなスポット。コーヒー一杯1銭5厘、牛乳入りが2銭でした。当時、もりそばが8厘ほどだったといいますから、コーヒーはちょっと贅沢な嗜好品だといえます。

1902年 資生堂がソーダファウンテンを設置
資生堂薬局内にソーダファウンテンを設置、日本で初めてのソーダ水や、まだ珍しかったアイスクリームの製造・販売を行いました。現在の資生堂パーラーへと受け継がれます。

1911年 カフェー・プランタンオープン
日本で初めて「カフェー」を名乗る会員制サロンが銀座にオープンしました。パリのカフェのように芸術家が集まる場となっていきました。こちらもパリにならい、アルコールも提供していたそうです。

1950年頃 スパゲティ ナポリタン誕生
横浜のホテルニューグランドが、日本で初めて喫茶店の大定番「ナポリタン」を提供したと言われています。今でも館内のコーヒーハウス ザ・カフェで、当時の味をいただけます。

1980年 ドトールコーヒーショップ オープン
1号店は原宿。セルフ形式のカフェの走りとなりました。

1996年 スターバックス初上陸
東京・銀座に日本第1号店の「スターバックス銀座松屋通り店」がオープン。北米以外では初出店だったそうです。

2015年 ブルーボトルコーヒー
サードウェーブコーヒーの先駆者、ブルーボトルコーヒーが東京の清澄白河に出店。高品質の豆を使用し、バリスタが一杯ずつ丁寧にハンドドリップで淹れるこだわりのコーヒー。創業者のジェームス・フリーマンは、日本の喫茶店文化に大きく影響を受けたとされます。こちらも海外進出第一号です。

参考:Hanako特別編集 喫茶店に恋して。[改訂版]

カフェと喫茶店、過ごし方の提案

どのお店でどう過ごすかなんて、人それぞれ。とはいうものの、カフェ好き、喫茶店好きの視点は、より豊かな時間を過ごす上でヒントになります。

東京カフェ、と呼びたいスタイルが生まれたのが2000年前後である。<中略>新世代のカフェは、世界中から雑多なカルチャーが流入する東京らしさ、さらに言えば作り手の「自分らしさ」を打ち出すようになった。<中略>ゆえにカフェは一種の自己表現の場ともなっていった。
CASA BRUTUS特別編集 カフェとロースター(マガジンハウス)
AROUND 2000 日本のカフェ文化が生まれた時代 Yoko Kawaguchi

 

そこはまるで“昭和博物館”のようで、わざわざ足を運ばなければ味わうことのできない空間があり、それを珈琲一杯の値段で鑑賞できることに感謝しかありません。<中略>店内では、内装やインテリア、コーヒーカップなど店内の隅々まで見渡しますが、選ぶ席によって見える世界が違うので、あえていろいろな席に座るようにしています。
喫茶店の本(ぴあMOOK)
喫茶店を愛する理由 難波里奈

個性あふれる店主のセンス、創意工夫を楽しむのが、カフェめぐりの醍醐味のひとつと言えそうです。加えて喫茶店は歴史の積み重ねを含めて、味のある空間を楽しむことができます。

まとめ

カフェと喫茶店の間には、過去には営業許可の明確な違いがありました。しかし、現在では喫茶店営業は飲食店営業に統合され、その境は曖昧に。両者の間にあるのは、文化による違いと言えそうです。

カフェは文化人の社交場から始まり、セルフ式、こだわりのサードウェーブコーヒーへ、それ以外にも店主の個性が現れる洗練された空間に。喫茶店は、「古き良き」の形容がぴったりのレトロな空間で、人の営みの積み重ねを感じることができるでしょう。一歩深くカフェ、飲食店を楽しむためのヒントになれば幸いです。

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