プロが教える接客の言葉遣い〜接客の7大用語と正しい敬語、NGワードまで〜

ちょっとした言葉の違いで、お客様の印象は良くも悪くも変わります。適切な言葉遣いは、接客を生業とする人にとって、とても強力な武器になります。多様な接客経験を持つマナー講師の村山愛さんに、表現の基本と接客の7大用語、正しい敬語の表現について聞きました。

協力:日本サービスマナー協会

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接客の言葉遣い3つの基本

具体的な用語の前に、接客でさまざまな言葉を使う上で、身につけるべき考え方を聞きました。

1.言葉の意味を意識して心を込める

後述する「7大用語」のように、接客にはよく使われる言葉があります。毎日口にしていると、お題目のようになって、心のこもらない言葉になってしまいがち。言葉の本来の意味を再び意識して、気持ちの入ったコミュニケーションにすることが大切。詳しくは下記の「接客の7大用語とは?」で解説します。

2.明確な言葉を使う

接客は一期一会です。曖昧な言葉をつかうと、お客様に真意が伝わらず誤解を与えたり、表面的なコミュニケーションになってしまうことがあります。
村山さんが注意するのは「すみません」という言葉。謝罪にも感謝にも使われますが、前者なら「申し訳ございません」、後者なら「ありがとうございます」と使い分けることで、さらに気持ちが伝わります。。

3.正しい敬語を使う

当たり前に使われている言葉でも、誤用されている敬語は少なくありません。お客様によっては違和感を覚えたり、場合によっては不快感につながることもあります。正しく日本語を使って、気持ちの良いコミュニケーションを心がけましょう。詳しくは、下記の「敬語の基本」をチェックしてください。

接客の7大用語とは?

村山さんは、お客様に対して使用する基本的な言葉「接客の7大用語」を教えてくれました。本来の意味を意識し、明確に使い分けて、気持ちを伝えることが大切です。

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「いらっしゃいませ」

お客様を歓迎する言葉です。お店や会社に来てくださったことに、感謝の気持ちを込めて伝えましょう。

「かしこまりました」

相手の依頼や申し出を了承した、という意味です。言外には「了承したことをきちんと行います」というニュアンスがあります。安心していただけるよう、しっかり相手の目を見て言うことが大切です。

「少々お待ちください」

お客様をお待たせする時や、自分がその場を離れる時に使います。申し訳ない気持ちを表現することが重要ですが、その度合いにはご注意を。大げさすぎる表現は、場にそぐわず、信頼を損なう可能性があります。
また、「ください」は命令形なので、「お待ちいただけますか?」と依頼する形にすると、さらに柔らかい印象を与えることができます。

「申し訳ございません」

前述の通り謝罪の意を表す言葉です。特に謝る場面ではないのに使う人もいますが、それはNG。「申し訳ございません」を乱発すると、本当に謝罪するべき時に気持ちが伝わらなくなる可能性があります。

「お待たせいたしました」

対応やサービスの提供を、待っていただいたことに対する謝罪や感謝の気持ちを表す言葉です。「お待たせして申し訳ありません」「お待ちいただきありがとうございます」と、気持ちを明確にするとより良いでしょう。「お待ちください」と同様に、大げさになりすぎず、適切なトーンで表現しましょう。

「恐れ入ります」

感謝、謝罪、謙譲など、さまざまなニュアンスを表す便利な言葉です。例えば、お客様に褒められた時など、へりくだって「恐れ入ります」と使います。また、「申し訳ございません」と言えば大げさになってしまうけれど、多少の手間や時間をかけさせた時などにも使います。
「恐れ入りますが、お名前をご記入いただけますか」など、依頼やお断りをするときに表現を和らげる「クッション言葉」にも使えます。

「ありがとうございます」

接客でもっとも大切な感謝の気持ちです。心を込めて、お客様に伝えましょう。

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敬語の基本

敬語は大きく「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」に分けられます。それぞれの意味を知り、正しく使い分けていきましょう。

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尊敬語

人の行動や存在について、相手を上位に置く表現です。「お客様」「御社」と言えば、相対的に立場が上であることが伝わります。「いらっしゃる」「召し上がる」「くださる」「られる」など、相手が主語となる動詞も尊敬語です。

謙譲語

相手を持ち上げる尊敬語に対し、自分を下げて相対的に敬意を表明するのが謙譲語です。「いただく」「申し上げる」「伺う」など、自分を主語にへりくだる表現が当たります。「弊社」「手前ども」といった言葉も使われます。

丁寧語

相手に対して直接的な経緯を表し、丁寧に言う敬語です。「〜です」「〜ます」といった表現が一般的。また、「お食事」「ご飯」「おいしい」など、品位を加える「美化語」も丁寧語のひとつとされます。

二重敬語にご注意を

ひとつの言葉に同じ種類の敬語を入れる「二重敬語」は、正しい言葉遣いではありません。たとえば「おっしゃられる」は「おっしゃる」と「られる」の尊敬語が重複する二重敬語で、誤りです。

よくある接客のNGワード一覧

最後に、接客シーンでありがちな間違った言葉遣いをまとめました。上記のように誤用が定着したものもありますが、接客のシーンでは、お客様に誤解や違和感を与えないよう、より正しい表現をチョイスするべきでしょう。

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「〜のほう」
「私のほうからご説明します」「コーヒーのほうをお持ちしました」といった例。「ほう」は方向や比較対象を示す言葉なので、この場合は不要です。「私からご説明します」「コーヒーをお持ちしました」が正解です。

「よろしかったでしょうか」
「ご注文は以上でよろしかったでしょうか」などと使われます。過去形にする必要はなく、「ご注文は以上でよろしいでしょうか」が正しい表現です。

「〜になります」
「なります」は変化を表す言葉なので、「こちらがお品物になります」「トイレはあちらになります」という表現は正しくありません。「こちらがお品物です」「トイレはあちらでございます」と伝えましょう。

「〜からお預かりします」
「1万円からお預かりします」など会計時に登場するワードです。「から」は場所や時間の起点を表す言葉なので、適当ではありません。「1万円お預かりします」で構いません。

「なるほどですね」
「なるほど」自体は副詞・感嘆詞であり「いかにも」「確かに」同意したという気持ちを 表現する際に使用しますが、目上の方への使用は不快感を与える可能性があることと「なるほどですね」という言葉は文法上存在せず、「なるほどそうなのですね」を略して使用されている造語と言われています。
相手の言葉に対し納得したという意味合いで使用されることが多いですが、その場合は「仰る通りです」「そうなのですね」などに変換して伝えることが好ましいでしょう。

「了解しました」
完全に間違った敬語とは言えない、との説もありますが、尊敬語でも謙譲語でもないので、目上の人には使わないほうが無難です。謙譲語の「承知しました」「かしこまりました」がよいでしょう。

「〜いたしますか?」
お客様に「どちらの商品にいたしますか?」と聞くのは間違い。「いたします」は自分がへりくだる謙譲語なので、「どちらの商品になさいますか?」が正解です。

まとめ

接客の言葉遣いで基本となるのが、「言葉の意味を意識して心を込める」「明確な言葉を使う」「正しい敬語を使う」の3点。接客の7大用語は、言葉の持つ意味と感情を一致させて使いこなすことが重要です。また、間違った敬語はお客様の違和感、場合によっては不快感につながります。よく使われているNGワードをチェックして、日々の接客に生かしてください。

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