飲食店、宿泊施設、アパレルショップやコンタクトセンター、セールスまで、あらゆる職業で必要とされる接客スキル。様々な業種の現場で接客に携わり、現在は教える立場でもあるマナー講師の村山愛さんに取材し、さまざまなテーマで接客を掘り下げてきました。本稿は、そのエッセンスを凝縮したまとめ記事です。関心があるテーマは、特に詳細記事にアクセスして詳しく読んでください。
接客の5大原則とは?
接客の基本を身につけるには、まず次の5つの原則を押さえておきましょう。
1.表情(笑顔)
2.身だしなみ
3.立ち居振る舞い
4.言葉遣い
5.あいさつ
接客の基本は「笑顔」。三分咲きの笑顔、五分咲きの笑顔など、状況に応じて笑顔を使い分けましょう。制服や服装の規定は、お店や会社のイメージを表現するものなので大切に。清潔感のある「身だしなみ」を心がけてください。
「立ち居振る舞い」は、疲労で姿勢や歩き方が乱れ内容注意しましょう。お辞儀は、会釈(15度)、敬礼(30度)、最敬礼(45度)を使い分けます。「言葉遣い」は丁寧語(「です」「ます」や「お料理」などの美化語で敬意を示す)、尊敬語(相手を持ち上げる)、謙譲語(自分がへりくだる)を正しく使い分けることが基本。下記の接客の7大用語もチェックしてください。「あいさつ」は口先だけにならないよう、「アイコンタクト」で気持ちを通い合わせることが大切です。
プロが教える「接客で大切なこと」とは? 接客のコツ[基本/応用]とNG行動を解説
接客をグレードアップする3つのポイント
基本を押さえた上で、さらに接客スキルが上がるポイントは次の通り。
1.共感を表現する
2.お店や会社のビジョンを理解する
3.最初の視覚情報、最後の聴覚情報
「接客は共感力が大切だ」と言われます。接客用語を棒読みするのではなく、「感情と表情、言葉をあわせる」ことが大切です。しかも、お客様がお喜びのときは自分もうれしいように、困っているときはその気持によりそって、相手の感情に合わせた表現が求められます。
同じ業種でも、お店や会社によって、求められる接客態度は実に多様です。適した接客を実現するためには、自分たちが商品やサービスを通して、どんな価値を提供しようとしているのか、「お店や会社のビジョンを理解する」ことが大切です。
人は主に視覚情報から第一印象を受け取るため、来店時に見せる表情や身だしなみ、立ち居振る舞いは大変重要です。
聴覚に訴える言葉遣いやあいさつは、お客様を見送るときにひと工夫するのがおすすめ。マニュアル通りの「ありがとうございました」だけでなく、「“暑い中ご来店いただき”ありがとうございました」と加えると、良い印象を残すことができます。
プロが教える「接客で大切なこと」とは? 接客のコツ[基本/応用]とNG行動を解説
接客のNG行動
わかっていてもやってしまいがちな接客の間違い。次のポイントに注意してみてください。
1.自分の感情で接する
2.間違った敬語
3.疲労時の態度の悪化
接客する側にも感情があるのは当然。しかし、イライラなど「自分の感情で接する」ことで、接客に影響を与えてはいけません。また、販売などのノルマがあると、ついつい焦ってしまいますが、良い結果にはならないものです。疲れが態度に出てしまう可能性もあるので、自分自身が不安定なときほど、お客様に寄り添って接しているか、自問してみましょう。
また、「間違った敬語は」相手に違和感を与えるので、「接客のNGワード」をチェックしてください。
●接客のNGワード一覧
「〜のほう」
「よろしかったでしょうか」
「〜になります」
「〜からお預かりします」
「なるほどですね」
「了解しました」
「〜いたしますか?」
プロが教える「接客で大切なこと」とは? 接客のコツ[基本/応用]とNG行動を解説
プロが教える接客の言葉遣い〜接客の7大用語と正しい敬語、NGワードまで〜
接客の言葉遣いと7大用語
接客用語を毎日繰り返していると、お題目のようになって、心のこもらない言葉になってしまいがち。下記の接客の7大用語は、言葉の本来の意味を意識して、気持ちをこめて使うことが大切です。
また、日本語に特徴的な曖昧な言葉は、誤解や行き違いの元に。例えば「すみません」は謝罪にも感謝にも使えますが、前者なら「申し訳ございません」、後者なら「ありがとうございます」と使い分けを。
●接客の7大用語
「いらっしゃいませ」…お客様を歓迎する言葉です。感謝の気持ちを込めて。
「かしこまりました」…相手の依頼や申し出を了承した、という意。安心していただけるよう、しっかり相手の目を見て。
「少々お待ちください」…申し訳ない気持ちを表現することが重要ですが、その度合いにはご注意を。大げさすぎる表現は、場にそぐわず、信頼を損なう可能性も。
「申し訳ございません」…謝罪の意を表す言葉です。特に謝る必要のない場面で使うのはNG。
「お待たせいたしました」…対応やサービスの提供を、待っていただいたことに対する謝罪や感謝の気持ちを表す言葉。
「恐れ入ります」…感謝、謝罪、謙譲など、さまざまなニュアンスを表す便利な言葉。
「ありがとうございます」…接客でもっとも大切な感謝の気持ちです。心を込めて、お客様に伝えましょう。
プロが教える接客の言葉遣い〜接客の7大用語と正しい敬語、NGワードまで〜
接客が上手い人の5つの特徴
お客様に良い接客を提供するには、いくつかの根本的なスキルが必要です。特に重要なのが次の5点です。
1.共感力が高い
2.傾聴力が高い
3.視野が広い
4.商品・サービスへの愛着が深い
5.言葉への感度が高い
前述のとおり、相手に寄り添うことが接客の基本。接客が上手な人は、お客様がどんな気持ちになっているか、敏感に感じ取り、その場に適した言葉や態度を選択します。「共感力」です。
また、接客が上手な人は概して聞き上手です。人は「自分の話を聞いてもらっている」と感じると、相手を信頼し、心を開きます。反対に、接客する人が好みや主張を強調すると、お客様は心を閉ざしてしまいます。
周囲に目配り、気配りができる人は、お客様の様子やサービスの問題点を即座に把握できます。反対に、自分の作業に集中しすぎると、対応が遅れます。視野の広さは接客スタッフの重要なスキルです。
また、よい接客スタッフは、商品やサービスと、それを陰ながら支える仲間への愛情と感謝を忘れないません。情熱を持ち、自分の言葉でお客様に接することができます。
最後に、繰り返しになりますが言葉は接客の重要な要素です。正しく、気持ちのこもった言葉をお客様にかけましょう。
接客が上手な人の特徴とは? 5つのポイントとスキルアップ法4+1
接客に向いている人/向いていない人
●接客に向いている人
お客様の喜ぶ姿をエネルギーにできる…お客様の喜んでいる姿を間近で見られるのは、接客担当者の特権
気持ちの切り替えが上手い…理不尽なクレームを受けたり、ハプニングへの対応に追われると、ネガティブな気持ちになりますが、引きづらないことが大事
商品、サービスに愛着が持てる…自分たちの商品やサービスを愛している人は、自分の言葉で感情を込めて、お客様にプレゼンテーションできます
●接客に向いていない人
人と接することが苦痛…コミュニケーションの弱点はトレーニングで克服できます。話が苦手なだけなのか、人と接することが精神的に苦痛と言えるレベルなのか、自分に聞いてみるとよいでしょう。
仕事をタスクとして割り切る…接客はマニュアルや決まった方法論だけでは、対応できないことがあります。作業を淡々とこなすのが好きな方は、接客に向いていない可能性も。
自分の世界に閉じこもる…ひとつのことに集中できるのは素晴らしい能力。しかし、接客には広い視野が求められます。
接客に向いていないかも!? と思ったら…向いている/向いていない人の資質をプロが解説
接客と接遇の違いとは?
接客…客に接すること。客を接待すること。
接遇…もてなし。接待。あしらい。
広辞苑第7版より
一見すると、大きな差はないように思えますが、接客と接遇の違いは、日本サービスマナー協会が指摘する「対応」と「応対」の違いに通じます。
対応は、レジで会計したり、オーダーを取ったり、クレームに対して返品・交換する、など、お客様に対する具体的な行動。応対は、お客様とコミュニケーションをとり心を汲み取ること。
接客は対応に近く、行動や事象そのものを示す概念。接遇は応対に近く、お客様と気持ちを通わせ、適切にもてなすことなのです。
下記には接客・接遇を学ぶのにおすすめの書籍も紹介しています。ぜひ、チェックしてみてください。
接客と接遇の違いとは? 接遇が持つ深い意味と心構えをプロが解説
まとめ
さまざまなポイントがある接客の技術と心構えを、プロのマナー講師村山愛さんに教えていただきました。こうしてみると、なかなかに奥深い分野だとよくわかります。ぜひ、一読して日常の接客とスキルアップに役立ててください。
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